春爛漫 潮に乱れるサンゴの“花” フィジーのサンゴ礁は美しい。ソモソモ海峡の海底は、ピンクの花のようなソフトコーラル(軟体サンゴ)がプランクトンを捕食しようと、触手を伸ばして待ち構えている。 この海を象徴するのが、色鮮やかなトゲトサカだ。季節感のない赤道付近の海底に、地上の春を思い出させるような光景が一瞬にして出現する。青い空に映えるしだれ桜のようだが、水深18メートルの世界は過酷だ。 体を左右に引きちぎるほどのすさまじい海流が、容易にこの場所に近づくことを許さない。水中マスクが勢いで顔からはずれそうになるほどだ。海峡は海流の変化が激しく、潮目が読めない。ソフトコーラルが咲き乱れるようになるのは、動き回る激しいこの潮があるためだ。 人間が容易に近づけない海もある。春爛漫(らんまん)の風景は美しかったが、私には厳しい撮影となった。 |